○土庄町障害のある人もない人も共に安心して暮らせるまちづくり条例
平成30年3月15日
条例第5号
目次
前文
第1章 総則(第1条~第7条)
第2章 障害を理由とする差別の禁止(第8条)
第3章 障害を理由とする差別を解消するための施策(第9条~第15条)
第4章 雑則(第16条)
附則
全ての人は、地域社会で生活する平等の権利を有している。しかし、現実には、障害のある人は、障害のない人に比べて多くの不当な制限を受け、排除されている。
平成18年に、国際連合で障害者の権利に関する条約が採択されたことをきっかけとして、障害のある人の社会参加の妨げとなっている社会的障壁を社会の責任で取り除き、障害を理由とした差別をなくし、障害のある人もない人も等しく基本的人権を享有する社会を目指すことが国際的に求められるようになった。日本国内においても、障害者基本法(昭和45年法律第84号)が改正され、また障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「障害者差別解消法」という。)が制定されたことで、同条約の理念を具体化する制度が整えられ、平成26年1月に同条約を批准するに至った。
このように国内の法整備が進む中、障害のある人の自立と社会参加は、その障害特性のみならず、障害や障害のある人に対する偏見、誤解等の意識上の障壁、障害のある人の社会参加を抑制する物理的障壁など様々な社会的障壁により、今なお十分に果たされていない。
そのため、町は、町民、事業者及び関係機関と障害のある人との相互の理解と協力により、障害のある人とない人とが共に支え合って暮らしていくことのできるまちづくりを、今まで以上に目指す必要がある。
このような状況を踏まえ、障害のある人に対する合理的配慮の提供などに関する理念が町民一人ひとりに根付き、障害を理由とする差別が解消されることにより、障害の有無にかかわらず平等な社会参加の機会が保障され、もって一人ひとりの尊厳と人格、選択と自己決定が大切にされる共生社会が実現されることを目指して、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、障害を理由とする差別の解消についての基本理念を定め、町の責務並びに町民及び事業者の役割を明らかにし、町民等及び行政機関等が合理的配慮の提供を行うための支援(以下「合理的配慮の提供支援」という。)を始めとする障害を理由とする差別の解消に関する施策を推進することにより、障害のある人が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、権利の主体として社会、経済、文化その他のあらゆる分野の活動に参加することができる環境を構築し、もって障害のある人とない人とが共に支え合い、活かし合うことができる地域社会を実現することを目的とする。
(1) 障害のある人 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難治性疾患その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により、継続的又は断続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(2) 社会的障壁 障害者が日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
(3) 障害を理由とする差別 不当な差別的取扱いをすることにより障害者の権利利益を侵害すること又は合理的配慮の提供をしないことをいう。
(4) 不当な差別的取扱い 正当な理由なしに、障害又は障害に関連する事由を理由として、障害のある人を排除し、その権利の行使を制限し、その権利を行使する際に条件を付け、その他の障害のある人に対する不利益的な取扱いをすることをいう。
(5) 合理的配慮の提供 障害者が現に社会的障壁の除去を必要としていることが認識できる場合において、当該障害者が障害者でない者と同等に権利を行使することができるようにするため、その実施が社会通念上相当と認められる範囲を超えた過重な負担とならない程度で、当該障害者の意向を尊重しながら、その性別、年齢及び障害の状態に応じて、必要かつ適切な現状の変更及び調整等の措置を行うことをいう。
(6) 行政機関等 障害者差別解消法第2条第3号に規定する行政機関等(町を除く。)をいう。
(7) 事業者 町内において商業その他の事業を行う者(町及び行政機関等を除く。)をいう。
(基本理念)
第3条 障害を理由とする差別の解消の推進は、全ての障害のある人もない人も等しく基本的人権を享有する個人としての尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを基本とする。
2 全ての障害のある人は、その社会参加を制約している社会的障壁の除去の実施について、合理的な配慮がされることにより、社会の様々な分野に参加し、及び協力することができることを基本とする。
3 障害を理由とする差別の解消の推進は、誰もが障害を有することとなる可能性があることを踏まえ、全ての町民が障害についての知識及び理解を深めることを基本とする。
4 障害を理由とする差別の解消を図るための取組は、差別する側と差別される側に分けて相手方を一方的に非難し、又は制裁を加えようとするものではなく、共に学び合い協力し合うことを基本とする。
(町の責務)
第4条 町は、前条に定める基本理念(以下単に「基本理念」という。)にのっとり、県と連携し、及び協力し、障害及び障害のある人に対する町民及び事業者(以下「町民等」という。)の理解を深めるとともに、次に掲げる施策を実施する責務を有する。
(1) 地域社会において、障害のある人と障害のない人が互いに理解し、共に安心して暮らすことができるようにするため、合理的配慮の提供支援を行うこと。
(2) 障害を理由とする差別の解消の意義及び基本理念に対する町民等の理解を深めるため、町民等の協力を得て、障害に関する理解の促進に取り組むこと。
(3) 障害を理由とする差別の解消に関する相談を受け、紛争解決に向けて必要な支援を行うこと。
(町民等の役割)
第5条 町民等は、基本理念にのっとり、障害及び障害のある人に対する知識及び理解を深めるとともに、町が実施する合理的配慮の提供をはじめとした障害を理由とする差別を解消するための施策に積極的に協力するよう努めなければならない。
(障害者計画との関係)
第6条 町長は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策について、土庄町障害者計画(障害者基本法第11条第3項の規定により策定された計画をいう。)に定めるものとする。
(財政上の措置)
第7条 町は、障害を理由とする差別の解消に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。
第2章 障害を理由とする差別の禁止
第8条 何人も、障害のある人に対して、障害を理由とする差別をしてはならない。
2 何人も、合理的配慮の提供を誠実に行うことにより、社会的障壁の除去に可能な限り努めなければならない。
3 前項に規定する社会的障壁の除去に際しての必要な合理的配慮は、障害のある人の性別及び年齢並びに障害の状態に応じてされなければならない。
第3章 障害を理由とする差別を解消するための施策
(相談)
第9条 障害のある人及びその関係者は、町に対し、障害を理由とする差別に該当すると思われる事案(以下「対象事案」という。)について相談することができる。
2 町は、前項の規定による相談を受けた場合は、必要に応じ、次に掲げる対応を行うものとする。
(1) 対象事案に係る事実の確認及び調査を行うこと。
(2) 相談者に必要な助言及び情報提供等を行うこと。
(3) 対象事案に係る関係者間の調整を行うこと。
(4) 関係行政機関への通告、通報その他の通知を行うこと。
3 町は、障害支援事業者(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第77条第1項第3号に規定する事業を町からの委託により行う事業所をいう。)に、前項各号に掲げる業務の全部又は一部を委託することができる。この場合において、町は、当該受託事業所と共同して相談業務を行うものとする。
(土庄町障害者差別相談等調整委員会)
第10条 町は、対象事案に対して助言又はあっせんを行うことの適否について審議するため、土庄町障害者差別相談等調整委員会(以下「調整委員会」という。)を置く。
2 調整委員会は、委員5人以内で組織する。
3 委員は、障害のある人の権利の擁護に関し優れた識見を有する者のうちから町長が委嘱する。
4 委員の任期は、2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
5 委員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
6 前各項に定めるもののほか、調整委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、町長が別に定める。
(助言又はあっせんの申立て)
第11条 障害のある人は、対象事案が第9条第2項第3号の規定による調整が図られてもなお解決されないときは、町長に対し、当該対象事案を解決するために必要な助言又はあっせんを行うよう申し立てることができる。
2 障害のある人の関係者は、当該障害のある人に代わり、前項の規定による申立てをすることができる。ただし、申立てが当該障害のある人の意に反することが明らかであると認められるときは、この限りでない。
(1) 行政不服審査法(平成26年法律第68号)その他の法令により、審査請求その他の不服申立てをすることができる事案であって、行政庁の行う処分の取消し、撤廃又は変更を求めるものであるとき。
(2) 申立ての原因となる事実のあった日(継続する行為にあっては、その行為の終了した日)から3年を経過しているとき(3年を経過するときまでに申立てをしなかったことにつき正当な理由がある場合を除く。)。
(3) 現に犯罪の捜査の対象となっているとき。
(助言又はあっせん)
第13条 町長は、前条の調査の結果、必要があると認めるときは、調整委員会に対し、助言又はあっせんを行うことの適否について諮問するものとする。
2 調整委員会は、前項の助言又はあっせんを行うことの適否を判断するために必要があると認めるときは、当該対象事案に関係する者に対し、説明若しくは意見を聴き、又は資料の提出を求めることができる。
3 町長は、調整委員会の答申に基づき助言又はあっせんを行うことが適当であると判断したときは、当該申立てに係る対象事案において差別を行ったと認められる者に対し、助言又はあっせんを行うものとする。
(勧告)
第14条 町長は、前条第3項の助言又はあっせんを行った場合において、当該申立てに係る対象事案において差別を行ったと認められる者が、正当な理由なく当該助言又はあっせんに従わないときは、当該助言又はあっせんに従うよう勧告することができる。
2 町長は、前項の規定による勧告をしようとするときは、あらかじめ当該勧告を受ける者に対しその旨を通知し、かつ、その者に対して意見を述べる機会を与えなければならない。
(公表)
第15条 町長は、前条第1項の規定による勧告を受けた者が正当な理由なく当該勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。
2 町長は、前項の規定による公表を行おうとするときは、あらかじめ当該公表に係る者に対しその旨を通知し、かつ、その者に対して意見を述べる機会を与えなければならない。
第4章 雑則
附則
この条例は、平成30年4月1日から施行する。